お山歩日記2001「 西大台ケ原〜幻想の森編」
山域 |
西大台ケ原 |
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期間 |
10月15日 |
参加者 |
カエコ、トシオ |
先月の終わりに、カホが言った「久しぶりに大台ケ原に行こう!」
大台ケ原は私の登山の原体験で、93年にカホに無理やり連れて来られた。
その後富士山登山の為に道具を揃え、次第に貯まりゆく道具のせいで止めるに止められず
今に至るのだが、ということはカホは私の師匠なのか?
世に云う大台ケ原は東大台ケ原なんだが、結構行ったことがあるので
世に知られぬ西大台ケ原にしようと、話がまとまった。
しかし、実際日程が決まると、どうも返事が重く雲行きが怪しい。
返事が重いと大抵ダメになるのを学習しているので
保険のつもりでカエコさんとリツコに声を掛けたが、リツコも怪しい・・・
最悪、エツコを含め3人かと覚悟していたが、予想どうり前日2人ともドタキャン。
その上、11日に交通安全の旗振り当番のエツコは、教師が旗を渡すのを忘れた為に15日に旗振り延期。
カエコさんと2人旅になった。その結果往復8時間一人で運転のはめになる・・・・
お二人さんありがとう。
6時和具出発。大台ヶ原には南周りと北周りのアクセスがあるがどちらも時間的には大差ないので、
勝手知った北回りのルートを選択。165号で飯高を経て高見峠の長いトンネルを抜けると奈良県だ。
東吉野を横切り上川村から奈良県を縦断する169号(東熊野街道)に出る。
来るたびこの道は何時も工事中、反面道はどんどんよくなり思いの他早く着く。
途中で南周りの尾鷲に通じる425号は通行止の表示あり。ラッキーだった。
大台ドライブウエイに入ると標高1550mの山頂駐車場まで20k。30分以上も長い蛇行した道が続く。
その殆んどが1000m以上の高さなので、見晴らしは素晴らしいがこれがまた着きそうで着かない。
以前、リツコと行った時には駐車場に着いた途端、逆噴射。車酔いする人にはキビシイ。
9時40分到着。早くも駐車場は満杯に近い。やはり紅葉のシーズンは混んでいる。
今回の目玉は野点(のだて)山で抹茶を立てて飲もうという、日本文化の香り漂う企画なのだ。
ふと見たモンベルのカタログで野点セットを発見、即買い。
長年茶道教室に金をつぎ込んだリツコに教えを乞い、お茶はいい物しろとの指示で
なんと20g1200円という高価なお茶を購入。
聞けばカエコさんもお茶を習っているそうだ。満を持しての登山である。
しかしである・・・看板に「大台ヶ原ではキャンプ及び自炊は禁止!」と書いてあるではないか。
出鼻を挫かれつつも、登山後駐車場で湯を沸かせば問題なかろうと泣く泣く車に置いて出発。
駐車場の入り口に大台教会、西大台と見落しそうな看板を下る。
2分ほど歩くと神殿が姿を現わすが、道から少し外れるので素道リする。駐車場の喧騒がウソのような静けさで
何よりハイヒールや革靴をはいてスーパーのレジ袋を下げた不埒な輩がいないのがイイ。
「みんな知らんのや。」と優越感に浸り高度を下げる。
東と西の違いは東が日出ヶ岳をピークとした尾根歩きに対し、西はピークの駐車場から始まる森林散策である。
駐車場1550mから最低部の開拓分岐付近1300mまで高度差250m。
何時もとは違う下りて登る逆パターンだ。
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中谷木橋 |
つり橋 |
この標高付近では紅葉が今が盛りだ。ブナやミズナラの原生林の為にか全体的には黄色と茶色であるが
所々に点在するするモミジの赤がアクセントになり、見る者を幸せにさせる景色だ。
何よりもいいのが苔だ。枯葉の茶の隙間の鮮やかな緑は得もいわれぬ。
緩やかで足場のしっかりとした道を小1時間ほど下ると苔むした木橋が現れる。
「いいなぁ。いいなぁ。」を連発しながらさらに進むとさらにもう一つ木橋。どうやらここが中谷木橋のようだ。
そしてここからが核深部。水と植物が織り成すアナーザワールド、別世界への入り口だ。
なにせ見事に人と会わないので静かで、枯葉を踏む靴音が心地よい。
しかしこのお惚けコンビは赤い実を見れば「食べれるかなぁ?」と硬さを確かめ、
キノコを見つければ杖で突付き、見事な苔にはなでて指を突き刺し厚みを計る。
(ちなみに人差し指の第二関節まで入った。)人がいないのをいい事にやりたいほうだいである。
一応、自然探求ちゅことで・・・ご勘弁を。
この苔が只者ではない。種類もいろいろあり、同じ緑でも濃淡に差があり密集した物は苔の絨毯というべきか、
それはそれはフカフカの触感で、しかも以外なことにサラサラしている。
しばらく歩くと鉄の吊り橋に出る。底が金網なので川がまる見え、左右に加え上下にも揺れる。
1mという高さなので余裕をもってスリルを味わえるが、もっと高ければ足がすくみそうだ。
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栃の木 |
苔の階段 |
ビビったカエコさんが後ろからザックにしがみ付く。これが若いネーちゃんなら恋が芽生えるかもと、
懲りない中年男は妄想の世界へ。
2度目の吊り橋を渡ると直径1m高さ30mはあろうかと思える見事な姿のトチノキが鎮座している。
まるで森の番人のようだ。そして開拓分岐、本日の最低地点だ。
逆川をジャブジャブ渡ると苔が美しい木の階段がある。が、見た目だけで実際は陥没していて役に立たない。
そして別世界が広がる。落葉樹の黄色と茶のは越しに差し込む日の光はセピア色。
平面に広がる背の高い木によりドームとなった空間の広がりは、そこにいる者しか体感できない。
小川のせせらぎと小鳥の鳴き声、ハラハラと舞い落ちる枯葉。静寂な森には時間の流れさえ違って感じる。
太古の森の時間。自然のスキルは偉大だ。
お二人さん、ざまぁみろ!「来なかった人は大損やよな。」と2人でほくそえむ。
森がヒメシャラの林になると展望台だ。東大台ヶ原や大蛇グラ、中の滝が展望出来る。
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大蛇ぐら |
日出ヶ岳 |
といっても標高は1380m程なので見渡すのではなく、どちらかといえば見上げるという感じだ。
しばし休憩。ここで今日初めて他の登山者に出会う。
鬱陶しいので、再び逆川(さかさまがわ)を越え開拓分岐へ。
越えながら逆流もしてないのに何故だと思い、股の間から覗いても見たが分からなかった。
後で調べたら、地元では迷う事を逆(さか)さまになるというらしい。
確かにこの開拓分岐付近は景色は抜群だが、平地でしかも枯葉が降り積もり何処がルートか分かり難い。
目印のテープも殆んど無く、迷わぬように目を凝らし踏み跡を捜す。
するとロープが1本だけ(しかも弛んでいる)渡しただけの小川をがある。
ロープに何の意味があるのか(テープでもいいのにと)首をヒネリながら、さらに小川を二つ越えるといよいよ登りだ。
しばらく登ると経ヶ峰分岐。ここで昼食を取る。
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川渡り |
苔の世界 |
周りの景色は明るいブナ林なんだが、人は現金な物で一番いい物を見てしまうとそれより落ちる物は
つまらない物に見えてしまう。けっして悪い景色ではないのだが・・・
小一時間程登り薄暗い山のピークに出ると、看板があった。
「七つ池」んん?あれれ池など何処にないぞ!地図に書いてある湿原は何処だ。
あるのは今まで見てきた苔むした倒木と笹。
間違いだろうと写真も撮らず先に進んだが、あとは下りで何の変哲も無い登山道だ。
どういうことだ。さすがに何故何故シリーズに腹が立ち、
「あれはバカにしとる。たった一つも池が無いやん!」とこぼすと
「一つでもあると他に無いか捜すでしょう。」と嘉永子さん。
う〜ん、なんか妙に説得力がある。さすが保母さん。
歩くうちに車の音がするので変だなと思っていたら、ドライブウェイのすぐ下を登山道が通っている。
今までの静けさが嘘のようだ。やはり自然の一番の大敵は人間に間違いない。
そこに軽装のオッサン登場。開口一番「七つ池まであとどの位?」
大体の時間を教えてあげると、「池はどう?」と。
待ってました。ここぞとばかり力を込めて説明。あまりの2人の勢いにオッサンは行くのを断念。
かく語る。「大阪から日帰りバスツアーで来て、着いたら12時半、
急いで昼飯食って出発の3時半までに写真で見た池の景色を見ようと1時間位歩いて来たけど
何も無いならやめるわ。来る前に聞いたら、池は雪解けの5月の始めしか見れないと言うとったんやけどな。」
知っとったら来るなよ。ブチブチ文句をいうオッサンを引き連れ駐車場に向け行進。
ナゴヤ谷という開けた広場でオッサンと別れるが、その先からのルートが無い。
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ナゴヤ谷 |
逆方向にテープを見つけ急登すると、何故かドライブウェイに出た。
慌てて地図とにらめっこ。しばらく通り行く車からの珍しげな視線を受けつつ、再びドライブウェイ直下の登山道へ。
ようやく大台教会の近くにたどり着くと、教会(と言っても神道)が副業でやっている食堂「たたら亭」の看板が語る。
「美味しいお茶をどうぞ。」そういえば本にコヒーが美味いと書いてあったと思い出し、覗いてみた。
店の前にメニューが貼り出してある。鴨うどん、カレー、・・・なるほど・・・コヒー、紅茶、牛乳、抹茶
待て待て、抹茶かよ!賞賛の目の中、優越感に浸る私の野点計画は・・・・・
一気に下がるテンション。OH!NO!
落胆のまま人でごった返す駐車場に到着。傷心の私はビールも飲めないので直ちに帰路につく。
「今度こそ」をくり返しながら・・・採らぬ狸の皮残余ってか。
全体的に笹が少ないので鹿害に苦しむ東と違い、1匹しか鹿は見なかったが
東より道も楽だし、危ない所もない。誰でも行けるがあまり人に教えたくないようないいところだ。
花丸登山でした。
まぁ、野点の楽しみは先にとって置いて、再見。
所要時間4時間15分
志摩お山歩倶楽部 監督 竹内敏夫