お山歩日記2001 「八ヶ岳〜遥かなる天狗への道編」
山域 | 八ヶ岳中部、天狗岳 | |
期間 | 7月29日〜30日 | |
参加者 | ノリヒコ、カヨコ、リツコ ミサト、ハヤテ、エツコ トシオ |
とうとう、やって参りました夏山の季節が、年2回の日本アルプスへのアタック。
ハヤテ長率いる[子らら隊」の遠征先は、八ヶ岳中部の天狗岳
さて、はじまりはじまり・・・
例のごとく夜立ちで10時に和具を出発。
途中、御在所SAで今や安全のゲンかつぎとなつた「うどん」を食べる。
最初は単に夜食だったのが、うどんを食べないと妙に天気が悪かったりするので
何時のまにか儀式となり、食べない奴がいると「お前が食べないから雨になった」とか言われるので、
責任回避の為みんな腹具合に関係なく粛々と食す。
中央高速をひた走り、諏訪湖SAで仮眠の後,茅野市内のコンビニで食料を調達。
そこで、東京組のノリヒコと合流。
朝靄の中、八ヶ岳山麓ののどかかな風景に見とれていたら道を間違った。
農作業をしている初老の夫婦に道を聞き事無きを得たけれど、
完璧な東京弁で説明を受けるのは違和感あり。(そういえば長野弁ってどんなんだろう?)
6時過ぎに登山口である硫黄の匂いぷんぷんの奥蓼科温泉郷、渋の湯に到着。
長い一日の始まりだ。
出発前からの懸念は子供達の気持ちがもつかどうかと、私の荷物の重さだ。
荷物の軽量化は毎回の課題だけど、子供連れの山小屋泊では3人分を担がなければならず
パッキングしてみるととんでもない重さだ(重量を測ると担ぐ気がなくなる)。まるで子供一人を背負うようなものだ。
7時出発。最初は八ヶ岳の魅力である原生林歩きから。
苔むした道をしばらく歩くと、道はガレ(礫)場になった。ガレ場にも色々あるが一抱えもある石を磯場を渡るように飛び歩く。
寝起きの悪いハヤテ隊長は用意にもたつき怒られ、早くも拗ね男モード。後方からの歩き出しは予想どうり
30分もしないうちに疲れたの連呼。隊長とおだてても、お父さんが隊長だと乗らず遅れるばかり・・・
仕方ないので欲しがっていたコンビニで見つけたルアーセットを餌に説得。
そして「先頭で歩くとみんなが来るまでにいっぱい休めるぞ。」と耳打ち。効果絶大!
休める目標を与えてやると飛び跳ねて、大人顔負けのスピード。
お父さんは監督でハヤテが隊長との役割分担も出来?勢い余って穴に落ちたのをフォローする為に、
「隊長は危険を知らせねばいけない。」と言えば、危なそうな所を見つける毎に、「ここ危ないよ!]と叫ぶ。
兄弟相立たず、一人よければもう一人が拗ねる。それまで調子よく黙々と登っていたミサトは
「うるさい!分かっとるわ!もーハヤテ、ムカツク!」と怒り出す始末。
それでもハヤテ隊長とは違い文句を言いつつも前には進むのは、やはりお姉さん。
賽の河原 | 苔の庭園 |
しばらくすると、賽の河原と呼ばれる一面石だらけの場所に出る。よく霊山と呼ばれる山(白山とか御岳)には必ずと言ってもあるが
珍しい命名だが、しかし振り返って見る山麓の風景とあいまって絶景。
賽の河原をつめて行くとやがて尾根に出る。傾斜の少ない稜線歩きは快適で
リツコに言わせると京都の庭園的風景。涼やかな風が通る苔むした道を歩くと高見峠(2249)の山小屋に到着。
山小屋の隣に20m程の高見石と呼ばれる岩のピラミットがあってここからの360度の景色はすばらしい。
あいにくガスっていたために周りの山はイマイチだったけれど眼下に広がる白駒池は見事だった。
白駒池 | 高見石からの北八 |
子供達はこの山小屋で泊ると思ったらしく、再出発からは気持ちが切れひどい有様となった。
もっとも2時間も調子良ければよしとしなければ・・・
めぐりあせ悪く、中山(2496)まで高度差250mを1時間以上もかけてダラダラと登らなければならない。
林の中で風もなくよく滑り、やれ足の指が痛いだ、滑って足を打ちうずくまり、歩く時間と休む時間が拮抗。
やぶ蚊に襲われつつ、何時になったら着くのかと心配になりだした。
もっとも大人にとっても決して楽じゃなく、かく言う私も肩に食い込むザックの重さからか肩こりから頭痛に悩まされていた。
そして荷物が重いので、滑ると背中を引っ張られる様で踏ん張りが効かない。
それでも転ばなかったのも日頃のトレーニングのたまものかも・・・
いずれにしても、アルピニストや本格冬山登山は到底無理だという事にひとり納得していた。
それでも、5分置きの「あと何分で着くの?」攻撃を適当にあしらっている内に展望台というガレ場に到着。
既に出発から5時間経過。ここで景色を楽しみながら昼食。山とラーメンは我が倶楽部の定番なので、
お湯を沸かし、ラーメンを堪能する。これが妙にうまいんだな。最近の友達はチキンラーメンだ。
中山展望台 | ガスの天狗 |
ここからは殆んど平坦か下りなので、俄然張り切りだす子供達。
若干1名、ヨシエさんの遺伝子を強く受け継ぐノリヒコだけは下りは苦手だ。しかし今回は靴が新しくなったので
あまり転ばなかった。自己申告では3回。彼は靴のありがたみをかみ締めていたようだ。
中山峠まで下り、今夜の宿の黒百合フュッテ(2400)まで後5分。
足取りも軽く、ビールビールと唸りながら後続を振り切るようにばく進すると、林の合い間から山小屋の屋根が・・・。
そして、風になびく生ビールの旗。バンザーイ!
所要時間6時間、コースタイムの約1・5倍。皆頑張った。
一言に山小屋と言っても色々で、尾瀬のように風呂がある場合もあれば、赤岳展望荘みたいにシャワーもある場合もある。
しかし大抵は高度にあるために水は貴重で雨水をろ過したものが普通だ。
トイレはいつも問題で水洗に慣れた我々にはアンモニア臭との戦い直面してしまう。
今回はトイレは最悪、アンモニア臭強烈、蝿、蛆うじゃうじゃ、しかも明かりなし。あげく水枯れで歯も磨けず。
食事は飯が軟らか過ぎで、しかも大皿(大きくなかったけれど)に盛ってある。こりゃダメだわ!
乾杯 | 黒百合フィッテ |
個室が取れたのと(ひどい時は一人布団半分)、生ビールを差し引いても2度と来ない小屋の一つだ。
そうは言っても、酒にいやしい私は700円(山にしては意外と安い)の生ビールを2杯と、
わざわざ背負っていったバーボンを200cc程いただき食事前にはすっかり出来上がり
食後にブラックアウト!まぁ徹夜で登り、気圧が低いと酔いが回りやすいのでアルコールには気をつけましょう。
良い子は真似をしない様に!
翌30日は快晴。山の朝は早く、4時半に起床。晩、朝ともに食事時間は5時半。
気が向けばご来光(日の出)を見に行くが今回はパス。
6時半に荷物を山小屋に預けて天狗岳往復に出発。
中山峠に出ると雲海のお出迎え、昨日とは打って変わって山並みの姿がすばらしい。
目の前に浅間山、そして大菩薩連嶺。それらを横目に行く手の双耳峰の天狗岳。
東天狗岳(左)と西天狗(右) | 稜線からの南アルプス |
まずは東天狗を目指す。充分の睡眠と荷物の軽さ(アタック・ザックに行動食のみ)何より景色の良さが足取りを軽くする。
みんな絶好調。すれ違う登山者に「すごいね!」とほめられ鼻高々ハヤテ隊長元気よく「こんにちは」をくり返す。
岩礫の急登を休み休み進み、遠くから天狗の鼻のように見える天狗岩を回り込むとそこは東天狗山頂。
南アルプスや中央アルプスの山並みが我々を迎え入れてくれる。
八ヶ岳の主峰赤岳や硫黄岳が迫り、振りかえると昨日通った中山や北八の横岳、蓼科山。
一同、山の神様に感謝!絶景に感動する子供達にエツコが
「この景色は頑張った人だけが見れる贈り物なのよ。」と。
いい事言うやん、でも報われない時もあるんだなこれが・・・もちろん黙ってうんうんと、うなづいていたが。
そこで、今までデジカメばかり撮っていたので別に持って来ていたカメラで記念撮影をと取り出せば、
OH!NO!電池切れ。一枚もとれず。とほほ・・・
じゃ私がとカメラを出す理津子。2,3枚撮るとウイ〜ンとモーターの回る音。フイルム切れだ。
しかも前日慌ててわざわざコンビニで買った高価なフイルムは山小屋に。挙句のはては双眼鏡もザック仕舞い込んだままだ。とほほ・・・
苦笑いしながら隣の西天狗へ。一度50m程下り、再び登る。
その途中、嶺線上に可憐な山野草。山小屋で花の本を買った理津子に名前を尋ねると「本忘れた、でも後で分かる。」お見事!
その中にオレンジ色した車百合を発見。さっそく香代子に黒百合があると教えてあげる。
実は、一昨年南アルプスの千丈岳で(花が多いので有名)両方の百合がいっぱい咲いていて、
たまたますれ違ったオバサン達に「黒百合がいっぱい咲いていたでしょう」と声を掛けられた時に
力一杯「はい、オレンジのがいっぱい!」と香代子。オイオイ
「違うやろ!」思いっきりオバサンから叩き付きの突っ込みを入れられ、それ以来オレンジの百合は加代子の黒百合となった。
さてさて西天狗岳(2645)の三角点をタッチしてしばし休憩。
後からオジジ、オババの30人ぐらいの登山ツアー一行様が(近畿ツーリストらしい)ドヤドヤとやって来るので退散。
東天狗山頂 | 西天狗山頂 |
再び東天狗に登り(これが辛い!)別ルートで黒百合フュッテへ。
手挽のミルを使ったコーヒーを飲み、肩に食い込む荷物を背負う。いざ行かん渋の湯。
下山は1名を除いて皆得意なので意外とスムーズに進む。もちろん5分置きにあとどれぐらいコール付だが・・・
下りだして1時間余り、渋の湯への最後の分岐で休息していると、
突然エツコが腕に着けていた時計がないと言い出した。(普通、落ちれば分かるはずだが)
慌てて荷物を放り出してその前に休んだ場所まで逆戻り。少ししてリツコもお付き合い。
南八ヶ岳 | 中山展望台(手前)と北八ヶ岳 |
10分ぐらいと思い放っといたが、待てど暮らせど帰ってこない。
さすがに心配になり少し戻ると下りてくる登山者に会った。以下その会話
「空荷で登って行く女二人見ませんでしたか?」「見ました40位の人ですよね。一人は黒っぽい服着た。」「そうです。」
[凄い形相で、かっ飛んでいきましたよ。二人に少々間がありましたが・・・」
その姿目に浮かぶ。しかし見る人が見れば歳相応に見るんだ。20歳後半に見られて喜んでいたのは昔の話。
それからしばらくして無事合流したが、結局時計は見つからず始末。くたびれ損、ほんとトホホな奴ばかり・・・
かくして5時間に渡る行程も終了し渋川温泉着。
各自用意していたカレーやら牛丼なぞを食し、渋御殿湯にて汗を流す。
この旅館と隣の渋の湯しか近辺に何もなく、久しぶりに旅館でボットン・トイレに遭遇。
温泉自体はかなりレトロで使い古した檜の床と高い天井もちろん檜風呂だが生憎硫黄の匂いのみ。
木蓋が何枚もあり、それを捲って入浴。冷泉(こちらだけ何故か白濁)と交互に入り満足満足!
もちろんお決まりのビールは最高!
しかし、トホホ隊はやはり、とほほ・・だな。今回の教訓「人間、我慢が大切!」
文&写真 志摩お山歩倶楽部 監督 竹内敏夫