お山歩日記2002 「木曽駒ヶ岳〜白銀の紅葉編」
山域 |
木曽駒ヶ岳 |
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期間 |
10月24日 |
参加者 |
カエコ、リツコ、
エツコ、トシオ |
綺麗な紅葉を見ようと思った。紅葉は北に行くほど美しいが、日帰りとなると限度があるので、
考えた末に長野県の木曽駒ヶ岳に決めた。
時期的には9月下旬から10月始めがベストだが、子供の運動会が2回延期で予定変更を余儀なきされた。
高山の紅葉が期待出来なくとも、せっかく荷造りをしたのに荷解きするのは悔しいから、何が何でも行くのだ。
延期したお陰で参加人数が増え、トホホ大王のカホが久々に参加するなど、計5名になった。
彼の意気込みは、大層なもので1週間前から出発の時間を打ち合わせる事数度。
2日前には布施田近辺で両手を激しく振り足早に歩き去る姿が目撃されていた。
出発はpm11時30分に決まった。その朝10時にわざわざ私の家まで来た。
和具でさえ肌寒いのに3000m地点ではどんなに寒いのかと心配して、相談にきたのである。
30分程ああでもないと話した後、一回り大きなザックに詰め替えることになり、
顔を輝かせながら「じゃぁ夜に!」と別れた。
しかし、その2時間後に電話があり、「お腹が痛くて、今から病院に行くけれど、いけないかもしれない。」
思わず答えた。「なんですと?」
結果がわかり次第連絡するということになり、4時半にもう一度電話があった。
「どうも、腸閉塞で入院しなければならないみたいだ。」
なんとまぁ!間が悪いというか、とことんトホホな男だ。さすがはトホホ大王、本人には悪いが笑ってしまう。
という訳で、5人の予定が4人でいざ出発。
pm11時前に和具発。出掛けから雨が降り出した。
インタネットで調べた駒ヶ根の天気予報は3時に雨、6時には晴れ。それを信じて車を走らせる。
気合を込めて、御在所SAでうどんを食る。もちろん全員。ここまでくると、殆んど神だよりだ。
どうも雨雲と共に東に移動しているようで、一向に雨の止む気配なし。
土砂降りにならないだけましか。約4時間半、雨の中3時半過ぎに駒ヶ根に珍しく迷う事もなく到着。
菅ノ台のバスセンターの駐車場で、始発の時間まで仮眠を取る。
2時間程眠ると夜が明け、雨も上がった。
雲は多めだが、流れが速いので頂上に着く頃には晴れるだろうと楽天的な予想をする。
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バスセンターから見る木曽駒ヶ岳 |
朝霧しらび平 |
駐車場の電光掲示板には、昨日千畳敷のデーターが書き出されている。気温6℃、積雪なし。
しかし、ガスの晴れ間に遠目で見えた駒ケ岳の山頂部は白いではないか。
どうやら今朝の雨は高度では雪だったみたいだ。問題は雪の深さと状態だ。
バスとロープーウェイのセットの往復チケットを5人分を購入。ひとり頭3800円と結構なお値段である。
7時12分の始発前になると、似た様な格好の人々が駐車場に分散した車からゾロゾロ這い出てきて、
ほぼ満員になった。
途中赤いカッパの上下を着て背負子を持った長靴姿のネーちゃんが、運転手に会釈しながら颯爽と登場。
一体何者だ?山の関係者には違いないだろうが・・・
菅ノ平からしらび平までは国有林の中を狭い道を、バスの頭と尻を道からはみ出して蛇行して進む。
40分程でロープーウェイの駅のあるしらび平だ。
ガスっていてよく分からないが、どうやらこの辺り1500m付近が紅葉最前線らしい。
終点近くになり、各自にチケットを手渡す。あれ?1枚多いぞ・・・
そうか、トホホ大王の分まで買ってしまったのか。トホホ・・・どうしょう、3800円。
ドヤドヤと先を急ぐように降り、8時の始発の順番を取る。
改札横の窓口は明かりは灯ってはいるものの、カーテンが閉まっている。時間が迫るのでこうなれば実力行使だ。
窓をドンドン叩き無理やりオープンさせ、訳を言い払い戻ししてもらう。手数料50円で解決。ヤレヤレ
膝丈のグランドコートを制服の上に着込んだネーちゃんがきっちりと秒数まで計り8時ジャストに運行開始。
ガスのトンネルを抜けると7分30秒で、一気に2600mの千畳敷駅に着く。気温5℃
駅と一体化したホテル千畳敷を一歩出ると、そこは白銀の世界であった。
風もあり、体感温度は0℃位だ。
「山頂部は積雪があり、軽装では登れません。登山者の方は登山届を出して下さい。」とアナウンスが流れた。
慌てて防水と防風を兼ねてカッパのズボンを履き、その上にスパッツ(防水の脚半)を重ねる。
かじかむ指先でどうにか登山届を書き、いよいよ出動だ。
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新雪の千畳敷 |
乗越浄土への登り |
積雪は5cm程、新雪なので眼に鮮やかな白はようやく顔を出した太陽に照らされて、キラキラ輝く。
歩くごとにキュッキュッと鳴く。この位の積雪は足がホールドされるのでかえって歩きやすい。
氷河が隆起して、その後氷が溶け出して出来た谷であるこの千畳敷カールはまさしく畳千帖の広さで
夏山シ-ズンには辺り一面のお花畑で、秋にはナナカマドの身が辺りを真っ赤に染める。
しかし、2週間の遅れは雪となり、辛うじて雪の中に一本だけ身を付けたナナカマドを発見。一層さむ寒しい。
前に来た時は、夏山で色々な花が見れたが、登山を始めてすぐだったので結構辛かったという印象だった。
しかし、よくよく考えてみれば2650mまでロープーウェイで運ばれ、わずか200m登れば2850mの稜線に立てる。
所要時間40分楽勝である。10分程は平行移動だから急斜面の登りは30分である。
実際登ってみると新雪でとても上りやすく、しかも谷で風もなく日が上がるに連れ暑くなり、長袖一枚で充分だった。
経験とはありがたいものだ。それに2時間の仮眠がかなりのパワーになっている。寝る子は育つ。ちと違うか?
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千畳敷カール |
乗越浄土 |
乗越浄土(のつこしじょうど)とい稜線上の分岐点に着くと、真下に千畳敷の全景が広がる。
千畳敷から見ると屏風の様にそそり立つていた宝剣(ほうけん)山が間近に見える。
宝剣は積み木みたいな岩山で山頂付近では鎖を頼りに切り立った岩場を登る。
頂上は6畳ほどの広さで中央に直径1m高さ2m位の岩がそそり立っている。
その上に登るとと眼下にほぼ真っ直ぐに千畳敷の地面があり、吸い寄せられるようで足が竦みなかなか立つ事が出来ない。
鎖場では俺は高所恐怖症で足が竦むと言いビビってた奴が、
他の者が四つん這いが精一杯なのに何故かこの岩の上に立ち上がり「うん、怖いな」とつぶやいた。
一体何処が高所恐怖症なのか良く分からない私の従兄弟がいた。
今回は安全第一なので往復30分ではあるが、その姿を堪能するだけだ。
2分ほど歩くと宝剣山荘があり、ここから南北に道が分かれる。中央アルプスの縦走路、南は宝剣、北は中岳を経て木曽駒。
東西に遮る物は無く美濃の山々が一望出来る。西風が冷たく慌てて脱いだ服を着込む。
高所では風速1mにつき快感温度は2℃下がると云われ、2〜3mの少しの風でもかなり寒い。
風が吹きさらしの場所では雪は殆んど無いが、雪溜りでは20cm程の深みがある。
一度解けて固りアイスバーンとなった雪は最悪でアイゼンをしないと危険である。
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宝剣岳と空木岳 |
中岳山頂 |
今回は新雪なのでその心配はない。状態のよいパウダースノーで、砂丘に風紋が出来るように雪の上にも綺麗に風紋が出来ている。
太陽の日を受けキラキラ輝く雪の上に、わざわざ足跡を付けに入る。犬のマーキングみたいなものか。
南北100kmに伸びる中央アルプスは木曽川と天竜川に挟まれ、東側に南アルプスが間近に見える。
時間の経過と共に次第に雲も取れ、甲斐駒や千丈岳の姿が現われる。その北側には八ヶ岳。
高山ならではの景色を眺めながら、緩やかに登ること30分。中岳(2925m)に到着。
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風紋 |
中岳から駒ケ岳への下り雪景色 |
霊峰御岳がポンと飛び出す。この夏登った様子を思い出し感慨にふける。
この辺りから寒さの所為かどうもデジカメの調子が悪く撮影ごとに苦労する。精密な機械は苛酷な天候には不向きみたいだ。
後から来たオッさんグループと仲良くなり御岳をバックに互いの集合写真を撮り合う。
同じ始発組で「君たちは若いから、さすがに早いね。」と感心されるが、40を越えて若いと言われても何だかなぁ。
「そんなに若くはないですよ。結構いってますよ。」と答えたが、ひとまわり上のカエコさんだけはニコニコしていた。
中岳に登り初めて木曽駒の姿を見る事が出来る。70m下り100m上る、あと30分である。
落差のある岩場を慎重に降りると、冬場は閉鎖されている頂上山荘がある。
ここから再び上りだが、まだ人に荒らされていない雪があまりにも綺麗なので、「美味しそう!」とおもむろに食べ出す。
言い出しっぺは、やっぱりカエコさんだ。「シロップを持ってくればよかった。」
確かに上質のかき氷のようにふわっとして美味しいのだ。
どれどれと結局みんな食べ、口がサッパリしたところで登山再開。
多少はキツイが夏山遠征の時ほどの事もなく、なにせ寒いので持久系運動の登山には向いている。
一応フリースの耳当ては持っていったのだが、フリースの欠点は風を通す事だ。
冷たい風が耳の穴に入ると、頭痛がしませんか?みんなにおかしいと言われ続けているのだが・・・
風上の耳を押さえつつ、2956mの駒ケ岳山頂に到着。
北アルプスの乗鞍岳と槍穂高連峰がお出迎えだ。
さすがに、昨日から今朝の雨模様を考えるとここまでの天気の回復は期待していなかった。恐るべし御在所のうどん!
広いなだらかな山頂は360度の展望で、山頂神社の小さな堂以外突起物がない。
冬山の欠点は寒いので頂上に長いこといられない事だ。吹きさらしの中、神社の陰で悴む指で昼食を取る。
早々に下山開始。降りかけてると、中岳で引き返すと言っていたオッサンチームが登って来る。
「ここまで来たら行かなきゃ」と登山者に励まされたらしい。
降りるのは一気で、再び中岳への登り。登らなくてもいいまき道があり、
非常に心惹かれるがみんなが危険と看板に書いてあったと主張するために、安全第一やむなく登り開始。
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木曽駒山頂 |
宝剣岳 |
中岳を過ぎると、すぐに宝剣山荘だ。例により登山バッチを多数購入。
再び乗越浄から千畳敷に向かうが、人々の様子が違う。
服装が違うのだ。靴はスニーカーだし、カバンはショルダーだ。
下るにつれ一層カジアルになり、極めつけにはスカートだ。南斜面で雪解けのぬかるんだ道をスニカーや革靴で登って来る。
「舐めとんのか!」まぁ、往復3時間もあれば登れる山なので簡単に登れはするが、
こいつら痛い目に遭わないと解からないだろうなぁ。
朝駅で放送していたのは、彼奴らのためだったのだ。納得。
ロープーウェイの駅に着いたら、「発掘あるある大辞典」の番組スタッフが何故か血圧を測っていた。
訳はそのうちテレビで放送するだろう。見た人は教えて下さい。
11時半の便で下山。しらび平はガスが晴れ紅葉が素晴らしかった。
これで、一応初期の目的は果たした訳だ。メデタシ、メデタシ。
12時過ぎのバスを待つ間、思わずビールを買ってしまった。
しかし、寒い所で飲む良く冷えたビールは、一層寒くなるだけで失敗であった。トホホ・・・
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紅葉 |
しらび平駅 |
再びバスで菅ノ平の駐車場にたどり着き、昨年オープンしたという家族村(国民休暇村みたいな物)の日帰り温泉に向かう。
施設が新しく、広々とした園内の緑越しに南アルプスの山々が一望出来る。
しかし、今年は白馬鑓温泉の強烈な体験をしているので、普通の温泉では何か物足りないのだ。
口直しに生ビールを飲んで、生き返る。ヤッパこれでしょう!
駒が根の名物と言えば、「ソースカツどん」だ。白馬の反省から、ちゃんとした所で食べようと目を皿のようにして看板を見つめ
嘘か誠か元祖ソースカツどんの店木村屋というのがあった。
感想は美味しいけれど、甘い。御飯の上にキャベツの千切り、その上にソースにくぐらせたカツが乗る。
ソースは味噌カツのソースとトンカツソースを足して2で割ったような味で、結構甘い。
パンパンのお腹を抱え、3時に帰路に着くのであった。
おわり。
志摩お山歩倶楽部(しまおさんぽくらぶ) 竹内敏夫